2023.02.08

研究者が個人HPを持つべき3つの理由

はじめに

 2022年11月24日、研究者としての個人ホームページ(以下、HP)である「萩原真美-オフィシャルサイト‐」をリリースいたしました。私にとって、研究者個人HPをつくることは、2022年の大きな目標でした。
 研究室のHPならともかく、なぜわざわざ時間とお金をかけて個人HPをつくったのか、疑問に思う方もいるかもしれません。
 結論から申し上げると、研究者が個人HPをつくる意義は大きいと思っています。むしろ、つくったあとの方が、その意義を強く感じています。もっと早く作っておくべきだったと反省しているほどです。この記事では、拙HPの作成過程をたどりながら、その理由についてお伝えしたいと思います。

理由1:研究者とのコンタクトの利便性

 私が、研究者個人HPを作成しようと思った直接のきっかけは、新聞記者さんからの取材依頼でした。勤務先である大学HPの「お問い合わせ」から、私に取材したい旨ご連絡をいただき、広報関係の部署から連絡をもらい、知りました。おそらく先方が連絡をしてくださってから私が知るまで、2~3日は時間を要したと思います。

 今回のケースでは、研究者である私に直接連絡する術がないために、依頼主様にお手数をかけてしまったわけです。

 ところで、研究室または研究者個人のHPを設けている大学はありますが、少なくとも勤務校はそうではありません。また、例えば非常勤講師等、特定の研究機関に所属していない研究者にコンタクトを取りたい場合、どの組織・機関に連絡を取ったらいいのかすら分からないことがあります。

 大学の専任教員等組織に属している研究者は、仕事の性質上、学内の業務に加えて、学外に研究の知見を伝えたり、その知見に基づいた相談や助言を求められます。それに応えるのも研究者の大切な仕事です。そのシステムを十分整えられていないことは、少し大げさに言うなら、研究者自身の存在意義にもかかわる問題だと思います。

理由2:研究業績以外の「仕事」をひとまとめに示せる

 研究者の「仕事」は、研究業績、つまり論文・学会発表・著書等を以て示すことが多いです。ですが、それは一部にすぎません。研究者なら研究業績を見ればどんな知見を有しているかわかりますが、研究以外の業界の方には専門的すぎて分かりにくいと思います。
 研究者の大事な仕事といいますか役目に、研究知見を伝えることがあります。講演会やワークショップ、テレビ、新聞等のメディアを通じて、広く研究知見を伝えることが求められています。

 特にこの数年は、研究者がオンラインの講演や動画に出演する機会が増えており、以前より多くの研究者およびその知見について、手軽に知ることができるようになりました。ですが、あくまで講義や出演した番組等の単位になるので、その研究者の動画がひとまとめになっているわけではありません。情報が増えただけに、検索しやすい情報に偏るおそれもあると思います。


 そこで私は、「メディア」というページをつくり、出演したメディア(YouTubeや音声配信など)ごとにコンテンツのリンク等を貼ってみました。このページにすべてまとめているので、情報を探している方にとって、探す手間を省くことができます。

 この作業をしてみて、自分が思いの外多くの種類のメディアに出ていることを自覚しました。研究業績は、論文、著書、学会発表等カテゴリに分類して掲載しているので、それに倣ってメディアの種類ごとに整理しました。その結果、どんな媒体で、どんなアウトリーチをしているのかを一望でき、自分の「仕事」を俯瞰するのにも活用しています。

理由3:研究者自身をまるごと伝えられる

 たとえば、研究者に出演依頼をしたい方がいるとします。その際、その研究者がどんな雰囲気・人柄なのかが分からずに研究内容だけで依頼するのは、ある意味リスクがあります。なぜなら、その番組や演目に、その研究者が適任とは限らないからです。


 テレビ番組、CM、ドラマなどの演者を決めるのにオーディションをすることがありますが、それは演者やスタッフが協働して、番組や作品をつくるからだと理解しています。研究者もテレビ等に出るのであれば、演者側になります。その研究者が、その番組・作品にふさわしい演者なのかを判断したうえで依頼した方が、より良い番組・作品等が作りやすいです。それには、研究者の人柄・キャリアなど、研究者についてまるごと伝える情報の提供が不可欠だと思います。

 ところで、俳優、タレント、歌手、作家等、個人で仕事をしている多くの方が、個人の活動に関するHPを持っています。それを考えると、個人で仕事をする機会が多い研究者も、個人用のHPを用意するのはむしろ必然だという思いに至りました。


 なお、通常研究室のHPでは、経歴と研究業績は掲載されていますが、その研究者がどんな具体的なキャリアを歩んだのかは詳しく説明されていません。場合によっては、研究には関係ないキャリアは書かれていません。しかし、研究者が人生をかけて取り組んでいる研究は、どんなキャリアを歩んだかが大いに関係しているので、キャリアが説明されている方が研究内容やその知見も伝わりやすいのです。

 私の場合、研究者の中でも特殊なほうで、大学卒業後、➀民間企業に勤務、➁日本語教師、③中高教員、④大学非常勤講師・研究員他、を経て大学専任教員というキャリアを経ています。このキャリアがあったからこそ取り組んでいる研究でもあるので、キャリアを語らずして研究内容やその知見について十分お伝えしたことにはならないと考えています。

 私のHPでは、トップページのプロフィール下部で、キャリアのサマリーを書いています。各キャリアの詳細は、ブログ記事「ルーツ」をご参照いただければわかるようにしました。

 以上、研究者が個人HPをつくるべき3つの理由について、個人的な見解を書きました。研究者は組織の人間というよりは、個人の特性を出してやることが多い仕事なので、個人ホームページをつくる意義は大きいと思います。私もまだサイトを作って日が浅いので大きな変化はないですが、今後個人HPがあることでどんなメリットがあるか記事にしていく予定です。

 また、大学院生も立派な研究者。大学院生のうちから個人HPを持っておくと良いと思います。自分で作らずとも、無料でHPが作成できる、あるいはオプション対応で安価に作れるものがあるので、そのようなものを活用するのも手だと思います。


 

 

 

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