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はじめに
人生100年時代と言われて久しいですが、最近は社会人で大学院に行くことを検討している方が増えてきている感がありますね。
何を隠そう、私は社会人になってから2度も大学院に行っています。そして、現在は教職大学院の教員として、社会人院生の指導をする立場でもあります。
先日、修了生とオンラインで話をする機会があり、大学院を修了して職場に戻られ、院生時代よりも頼もしくなっていた姿に感動しました。元指導院生は、社会人になって大学院で学べたことは本当に幸運だったと語っていました。
ご自身の職場に社会人で大学院に行っている方がいると、自分もチャレンジしてみようかなと検討される方がいるかもしれません。せっかく行ってみたいなと思っても、いざとなると、何から手を付けたらいいかわからないという方も少なくないと思います。
そこで、社会人の方が大学院に行きたいと思ったら、まず何をしたらいいかについて、自分の経験からお伝えしたいと思います。手順を書くか迷いましたが、あえて質問形式にしました。ワークだと思って気楽にやっていただければと思います。ここでは、博士前期課程(マスター)を前提にします。
質問1:あなたは何を研究したいですか
大学院は、大学までとは違い、教わることがメインの学びではありません。自分が研究したいテーマを自分で決め、それについて自分で調査やデータを取る、実験をするなどをして、明らかにしていきます。なので、何を研究したいかを自分自身に質問することをお勧めします。
いきなり「研究」と言われても、難しくてどうしていいかわからないという方は、「あなたは何を知りたいですか」という質問でいいと思います。
この質問は自分自身と対話することになるので、ノート等に書くといいです。私の場合、「研究ノート」という専用のノートを用意し、そこに自分がどんな研究をしたいのか、なぜその研究をしたいと思ったのか、思いついたときに書いていました。この「研究ノート」は研究者となった今も活用しています。自分と対話しながら、研究したいことや気づいた問いなどを書き、思考を整理しています。
この作業は面倒がらずにやっていただくと効果があります。忙しくてまとまった時間がとれないことは問題ありません。昼休みや通勤電車の中など、隙間時間でもできます。ノートを広げることが難しいなら、スマートフォンのメモ帳に書いておいても良いと思います。
その作業をしばらく続けると、おそらく繰り返し同じ言葉が書かれていることに気づくと思います。それが研究テーマのキーワードになります。
それから、この時点でやりたいことが必ずしもはっきりしていなくても心配ありません。最初は、だいたいどんな方向性なのかをとらえればいいからです。
質問2:気になるテーマについて研究している人は誰ですか
質問1をやってみると、いくつかキーワードが出てきたのではないでしょうか。もしキーワードが出てきたら、そのキーワードを入力して論文を検索してみるといいでしょう。
論文なんかいきなり読めないと心配になる方がいると思いますが、いきなり読みこなそうと思わなくて大丈夫です。
論文を検索するには、専用のサイトを使うと効率的です。私は、テーマがあまり絞られていない場合、以下の2つのサイトを使っています。
- J-STAGE https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja/
- CiNii Research(サイニーリサーチ) https://cir.nii.ac.jp/
いずれのサイトも、キーワードを入力すると論文のリストが出てくるので、まずは論文のタイトルやサマリーから、興味があるものをピックアップしていくと良いと思います。その多くが無料でダウンロードできるので、気になるものをブックマークやダウンロードしておくといいでしょう。
興味がある論文をピックアップしたら、詳しく読む前にしていただきたいことがあります。それは、論文の著者をチェックすることです。
同じキーワードを入れて検索すると、同じ人物が何本も近いテーマで論文を書いていることが分かると思います。何人かに絞られてくると思うので、その研究者が所属している大学(学部)、研究機関などをメモしてみてください。
質問3:気になるテーマを研究している人はどこで学びましたか
質問2で、自分が気になるテーマについて研究している研究者が何人かピックアップできたと思います。次にすることは、その研究者が何の専門家なのかを確認することです。つまり、その研究者がどんな学問領域で研究をしているかということです。
大学院に進学するにあたり知る必要があるのは、自分が研究したいことはどこで学べばいいのかです。その「どこで」を知る作業を丁寧にする必要があります。
「どこで」というのは、最終的には、○○大学院△△研究科の■■研究室(ゼミ)になるわけですが、大学院から探そうとすると、研究科の名称だけでは判断ができないため、うまく見つけることができません。
そこで、自分がやりたいテーマの研究をしている研究者が、どこで学んだかを探すことをお勧めします。具体的には、どんな大学院の、どんな研究科で、どのようなことをやっている研究室(ゼミ)で学んだかを見ていくといいです。その際、どこの大学院かよりも、何の研究科(専門)なのかをよく確認するといいでしょう。なぜかというと、その大学に、その専門が学べる研究室がなくなっていたり、大学の改組で研究科や研究室の名称が変わっている可能性があるからです。
それでは、気になる研究者がどこで学んだかは、どうやって知ればいいでしょうか。一番手っ取り早いのは、researchmapという研究者を探すためのサイトを活用することです。このサイトにアクセスして、研究者の名前を入力すると、研究者の履歴がでてきます。それを見ると、その研究者がどこの大学院・研究科で学んだか一目瞭然です。
reseachmapは研究者が自分で登録するサイトなので、なかには登録していない研究者やしばらく更新していない方もいます。その点はご留意ください。
大学院、専門が絞られてきたら、ちょっと勇気を出してみる
社会人の方が大学院に行きたいと思ったら、まず何をすればいいのかについて、紹介しました。原則は自分が何を研究したいか、その方向性を知ることです。その答えは、あなたの中にしかないので、ぜひご自身とたくさん対話してみてください。
そして、だんだん絞れて来たら、テーマを完全に固めてなくてもいいので、気になる研究をしている研究者に何らかの形でコンタクトを取ってみるといいでしょう。
先ほどご紹介したreseachmapに研究者の所属が書いてあるので、大学教員の場合は、当該大学のHPからその研究室のページを見て、連絡してみたらいいと思います。メールアドレス等が分からない場合は、大学に問い合わせて、コンタクトの方法を聞くと良いと思います。
なかには、reseachmapにメールアドレスを公開している研究者もいるので、その場合はメールをして差し支えありません。
自分が大学院(博士前期課程)を受験した時期(2000年頃)は、まだメールアドレスが公になっていなかったので、気になる研究者の方に手紙を書いて、手紙が着く頃に大学の事務室等に電話をしていました。快くお会いしてくださる先生が多かったです。
大学教員等、研究者への具体的なコンタクトの取り方については、別記事で書きたいと思います。