2023.04.30

研究者が企業のウェブサイトにコラムを書く意義


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 このたび縁があって、IT企業であるやんばるスパイクさんのウェブサイト「やんばるメディア」にコラム「沖縄の経済格差とその背景―子どもをめぐる状況に着目して―」を書かせていただきました。

 研究者がコラムを書く場合、新聞、研究に関連する雑誌、ニュースや専門的な内容を扱うウェブサイトが多く、異分野の企業様に依頼を受けることは珍しいと思います。沖縄県の企業様ということで、自分の研究分野と接点はあったものの、このたび初めてこのようなご依頼をいただきました。大変光栄に思っております。

 自分がこれまで書かせていただいたコラムは、『現代用語の基礎知識』のような時事を扱う雑誌、沖縄や教育関連の雑誌、教育関係のウェブサイトのものでした。

 このたびやんばるスパイク様にご依頼をいただく経験をしたことで、研究者が、あえて企業、しかも異分野のウェブサイトにコラムを書く意義を感じることができました。そこで、3つ厳選してお伝えしたいと思います。

その1:その研究に関心がない方にも知っていただく機会になる

 

 研究者の書く文章は、主に自身の研究に関する論文や著書です。そのため、広く読まれないどころか、研究者の中でも同分野・隣接分野の方など、その研究内容に高い関心がある方に限られがちです。その結果、世の中にもっと知られた方がいいことも、なかなか伝わらないことがあります。

 ところで、意外かもしれませんが、論文はインターネット上でだれでも容易にアクセスできるものが多いです。しかし、研究内容をアウトリーチする機会の多くが、学会や研究会の場というクローズドな場。そもそも異分野の人に研究内容を伝える機会が限られているのです。

 企業様のウェブサイトだと、その企業様の事業内容やサービスに関心がある方に見ていただくチャンスがあります。そのため、その研究者の研究内容に普段触れない方に知っていただくことが増えます。

 特に、ニッチな研究や基礎研究をしていると、専門家のなかでもかなり限定されるので、間口が広がる大きな可能性を感じています。

 少し余談になりますが、自分の研究内容に関わることを少し詳しく知りたいという方に、論文や専門書を紹介するのは気が引けますが、このようなウェブサイトのコラムであれば、紹介しやすいです。実際に学生時代の友人ら(研究とは違う分野の仕事)に質問されたときに、このコラムを紹介することができて、喜んでもらえました。


その2:専門家ではない人に向けて書くスキルが身に着く

 ウェブサイトはその性質上、広く知る・伝えることができるので、さまざまな人が目にします。よって、専門家にしか通用しないような書き方では、いくら情報を発信する窓口が増えるからといって、読んでいただくことはできませんし、内容が伝わりません。

 専門家ではない人に向けて、研究内容が伝わるように、また読みたいと思っていただくように書く必要があります。そのためには、➀伝える情報を精査、➁本質的なことを抽出、③日常よく使われている言葉を使う、④短めに書く、⑤イラストや図など視覚情報も適宜入れる などのいわゆるライティングスキルが求められます。よって、ウェブサイトに記事を書く経験を積み重ねることで、それに即したライティングスキルが身についていくと思います。

 論文の場合は、正確に書くためにある程度説明的で長い文章が求められますが、自分の経験上、ウェブサイトの場合はその表現方法は求められていないばかりか、NGだったりします。ですが、論文で書いたことをそぎ落とす作業をすることで、真に大事なことが何かが見えてくる効果もあります。研究者としても自分の研究のエッセンスがわかるので、一石二鳥です。



その3:研究以外の分野の仕事が獲得できる

今まで同分野の専門家にしか知られていなかったことが、広く世間に知られることで、企業、公的機関、個人の方などから関心を寄せていただく機会が増えます。その結果、「●●について講演をしてほしい」「●●について専門家として詳しく教えてほしい」という、まったくの異分野の方を対象とした講演会やコンサルティングの依頼が来ることが考えられます。

 研究者の専門知識は、専門性が高いゆえにハードルが高いです。ですが、それを必要としているところは、研究者の予想できないところにこそ、あるのかもしれません。

 異分野の企業様からのウェブサイトにコラムの執筆依頼が来たとしたら、それは大きなチャンス!自分には、研究内容をかみ砕いて書くことなどできないと思いこまずに、チャレンジすると道が開かれると思います。

 私もまだ、同記事を書いたことによる直接的なお仕事の依頼があったわけではないですが、少なくとも自分の研究内容である、沖縄の教育問題に関心を寄せていただく機会が増えています。とてもありがたいことだと思っています。

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