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はじめに
お子様に対して、学校の宿題や定期試験の勉強をちゃんとやってほしいと思うあまり、つい「宿題くらいちゃんとやりなさい」、「好きじゃない教科も勉強しなさい」と言ってしまう。このような経験がある保護者の方はいらっしゃるのではないでしょうか。かくいう自分もその一人です。
興味が偏っている子は、自分の「好き」がはっきりしている一方、興味がないことには熱心に取り組まないどころか、見向きもしないケースがあります。学校の勉強や活動にやる気がないように見え、成績も芳しくないと、余計に心配になってしまうかもしれません。
興味が偏っている子にとって、どのような進路を選んだらいいか悩んでいるという声をよく聞きます。そこで今回は、高等学校(以下、高校)のうち、専門教育を主とする専門学科の高校、通称・専門高等学校(以下、専門高校)という選択肢についてご紹介します。
高等学校の種類
専門高校の話の前に、高校の種類について、「課程」と「学科」の観点からみていきます。
1.課程
全日制、定時制、通信制の3つの課程を置くことができます(学校教育法第53条・第54条)。
・全日制…通常の時間帯において授業を行う課程
・定時制…夜間その他特別の時間又は時期において授業を行う課程
・通信制…通信による教育を行う課程
この3つの課程のうち、いずれかを選びます。なお、一つの高校に複数の課程、たとえば、全日制と定時制がある高校(併置校)もあります。
2.学科
高校の学科は、大きく以下の3つに分かれています。
➀普通教育を主とする学科(普通科)
➁専門教育を主とする学科(専門学科)
➂普通教育及び専門教育を選択履修を旨として総合的に実施する学科(総合学科)
➁がいわゆる「専門高校」と言われている高校になります。
3.高校の学校数
全国の高等学校の課程別、学科別の学校数はどのようになっているでしょうか。下の表は、文部科学省のデータを基に、2020(令和2)年度における高校の学校数を整理したものです(注1)。
課程別 | 学科別 | ||
全日制 | 4,702校(84.0%) | 普通科 | 3,733校(56.1%) |
定時制 | 640校(11.4%) | 専門学科 | 2,543校(38.2%) |
通信制 | 257校(4.6%) | 総合学科 | 381校(5.7%) |
全日制・普通科の高校が圧倒的に多いイメージがあるかもしれませんが、このデータをみると、「専門高校」が全体の4割弱と、意外と多いことが分かりますね。
高校の種類が分かったところで、本題の「専門高校」についてみていきましょう。
専門高校
1.専門高校とは
文部科学省のホームページによると、専門高校とは以下の学校を指すと説明されています。
それぞれの職業で必要とされる知識や技術を学ぶことを中心にした高校のことで、その種類はたくさんあり、例えば、農業高校、工業高校、商業高校、水産高校などがあります。
すべての高校は、74単位以上で学校が定める卒業に必要な単位数(注2)を取得する必要があります。専門高校は、卒業に必要な単位数のうち、専門教科・科目から25単位以上取得しなければなりません。
2.専門高校の種類
高等学校設置基準によると、専門学科の種類として、以下のものが挙げられています。
農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉、理数、体育、音楽、美術、外国語、国際関係、その他
なお、その他とは、「専門教育を施す学科として適当な規模及び内容があると認められる学科」で、たとえば、観光学科、鉄道学科、演劇科などがあります。
事例紹介―「鉄道高校」を選んだ場合―
最後に、専門高校を選択した事例として、「鉄道高校」に進学したAさんのケースを紹介します。鉄道高校は、全国に2校しかない大変レアな専門高校の一つです。
Aさんは、私が中高の教員をしていた頃に授業を担当していた生徒です。Aさんの学年の別のクラスを担任していました。
Aさんは中学受験をして入学した、鉄道が大好きな生徒。その中学校には鉄道研究会はなかったのですが、社会科研究会という部活があり、そこで鉄道のことを詳しく調べることができたので、熱心に部活に取り組んでいました。
Aさんとご両親は、附属の高校に進学するつもりでいました。ですが、Aさんは興味がないことには熱心に取り組めないタイプで、ある科目の成績が芳しくありませんでした。
その学校では、内部進学の基準があり、Aさんは3年生の1学期時点では基準に抵触している状態。最終的に内部進学ができるかどうか見通しが立つのが、3年2学期末試験の結果次第(12月上旬)なので、そこから他の学校を探すのは得策ではありません。
頑張って附属の高校に進学するか、それとも実力相応の高校にするか。
せっかく中学受験して入ったのに、部活で鉄道のこともできて充実していたのに…と非常に悩んだと思います。
私も授業担当者として、Aさんが鉄道に非常に高い関心を寄せていたことは知っていました。1学期末にAさんの担任の先生から意見を求められたので、「鉄道高校」という選択肢があることをお伝えしました。
Aさんは夏休みを利用して「鉄道高校」の学校説明会に行ったところ、非常に気に入ったそうです。推薦入試がある学校だったので、その基準をクリアするために勉強を頑張り、見事合格することができました。
Aさんは、大好きな鉄道について専門的に学べ、同じく鉄道好きな友人たちに囲まれ、充実した高校生活を送ることができたそうです。高校卒業後は系列の短期大学に進学し、憧れだった鉄道会社に入社したと聞きました。
きっと今も立派な鉄道マンとして、生き生きと仕事をしていることでしょう。
おわりに
保護者の立場では、興味が偏っていると、可能性が狭まるのではないかと心配になるかもしれません。ですが、Aさんのケースのように、早い段階からやりたいことがはっきりしていると、夢を叶えやすい場合もあるのです。興味が偏っているタイプのお子さんは、「専門高校」を検討してみるのはいかがでしょうか。
注1:文部科学省「高等学校教育の現実」に記載されているデータを基に作成。
注2:単位とは、1単位時間を50分とし、35単位時間の授業を1単位として計算します。週1時間の授業が1単位と数えます。