本ページはプロモーションが含まれています
はじめに
現役・国公立大学・自宅通学・私大受験禁止
これは30年ほど前に、私が親から許可された大学進学の条件です。実際には、さらに「奨学金禁止令」も加えられました。この5つの厳しい条件をクリアできるのか、非常に不安になったことを今でもはっきりと覚えています。
このような厳しい条件が課されましたが、幸運なことに条件をすべてクリアして大学に進学できました。国公立だったこともあり、結果的に奨学金を借りずに無事大学を卒業することができました。
ところで、高校を卒業して30年経った今春、子どもが私の母校の高校に進学が決まり、親と高校時代の話になりました。その時、奨学金を借りることに強く反対された本当の理由を初めて聞かされました。それは担任の先生のご指導によるものでした。
近年、大学教員として、学生たちから奨学金を借りることによるその後の影響をよく検討せずに借りているケースを多く耳にします。大学等の進学にあたり、奨学金を借りるかどうかの判断基準になるかもしれないと思い、お伝えしたいと思います。
奨学金に対する高校側の一般的な指導
高校生が大学等に進学にあたり奨学金を申し込む場合、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の予約採用で申し込むケースが多いと考えられます。ここではJASSOに限定して高校側の一般的な指導について紹介します。
予約採用については、https://www.jasso.go.jp/shogakukin/moshikomi/yoyaku/flow.htmlに詳しく書かれています。
JASSOの予約採用の募集時期は、2期に分かれています。第1回目が高3の5~6月、第2回目が10~11月です。それに間に合うように高校では説明会が実施されます。よって、高3の1学期始め頃(4月)と2学期始め頃(9月)に実施されることが予想されます。早い高校だと高2の3学期にあるかもしれません。
一般的な手順としては、通っている高校で実施される説明会に参加し、校内〆切に合わせて書類を用意し、高校を通じてJASSOに申し込む流れです。
大学生たちからよく聞く声としては、高校の時に奨学金申し込みの手順の説明はあったが、奨学金を借りることの意味について詳しい説明はないこと、多くの生徒が説明会に参加し、その流れで奨学金を申し込んでいる人が多いので、そのままの流れであまり疑問を抱かずに申し込みの手続きをしたというものです。
これは必ずしも高校側が十分な説明をしていないということではなく、学生たちの認識によるところがあると思います。高校生の時は実感を持てないのが、大学卒業後の毎月の返済額の負担感や将来的な見通しです。特に、途中で離職等により正社員や正規職員ではなくなり、返済が難しくなった場合、具体的に何に困るのか、またどこに相談すればよいのかがイメージできないというものでした。
母が受けた、担任の先生のご指導
私の家庭では、奨学金を借りることを禁止されていたので、高校生として奨学金の申し込みの説明を受けた実体験はありません。
今回お伝えするのは、30年ほど前に母が高校の担任の先生から受けた、奨学金を借りることに対する説明の内容です。
おそらくクラスの保護者会のようなもので説明があったのだと思います。担任の先生は、奨学金を借りるのはできるだけ避けた方がいいことを話したそうです。特に女子生徒に関して、次のように言っていたと聞きました。
女子は、短大や大学に進学して就職しても、結婚や出産でずっと働き続けられるとは限らない。家庭を持った時に、自分の奨学金の返済があるのとないのとでは、家庭生活に大きく影響するし、本人の子どもの進路選択にも影響が出かねないので、借りる場合はよほどの場合にしてください。
母はこの説明を聞き、娘である私に奨学金を借りて大学等に進学することを断固として反対したことを教えてくれました。その結果、上記の条件になったそうです。今から30年前は、女性が結婚後家庭に入る割合が今よりずっと高かったので、高校の先生もこのような説明をしたと思います。
30年後だから思う、奨学金を借りなかったメリットとデメリット
大きなメリットは、500万弱の奨学金の返済をしなくて済んだことで、大人になってからの家計にゆとりができたことです。奨学金の返済は、大学4年間で貸与型の場合、500万円弱を20年ほどかけて返済するのが一般的だと思います。それをしなくて済んだのは本当にありがたいと感じています。
例えば、奨学金の返済の分である500万円あれば、子ども1人分の私立大学(ただし自宅通学)の学費の多くを賄えます。逆に夫婦とも奨学金を借りている場合は、1000万円近くの返済が必要なため、その分子どもに教育資金を回すことが難しくなるかもしれません。
デメリットは、進路選択が大幅に狭められたことです。限られた学費で選べる選択肢のなかから選ぶため、必ずしも自分が希望する道があるとは限りません。また、仮にあったとしても合格することができるとも限らないため、子どもの立場では大きなプレッシャーを抱きながら挑戦するか、自分の実力で入りやすい学校、つまり妥協をしかねないということです。
おわりに
高校生はどうしても目先のことを考えがちで、資金について長期的なスパンで考えることや、どのくらい稼げるか・稼げないか、それが自分の生活にどのような影響を与えるか、十分に考えることが難しいと思います。大学生になると、就職が目前に控えるので、ようやく奨学金の貸与が自分の生活に与える影響をリアルに想像できるようになると思います。
昨今、高等学校の家庭科で金融教育が本格的に始まったので、奨学金のことも含めて中長期的なマネープランを高校生自らが考える機会を持ち、大学等への進学を考えられればよいのではないでしょうか。日々大学生と接している立場から、強く実感しています。